サルベージ条項について

サルベージ条項とは

サルベージ条項とは、ある条項が強行法規に反し全部無効となる場合に、その条項の効力を強行法規によって無効とされない範囲に限定する趣旨の契約条項をいう。

消費者契約に関する検討会「報告書」18頁(令和3年9月)
男性弁護士
男性弁護士

上記のサルベージ条項の定義は消費者契約に関する検討会の「報告書」から引用させていただいたものです。

消費者契約に関する検討会は、令和元年12月から令和3年9月にかけて消費者庁において開催された検討会です。

サルベージ条項の具体例

例えば、「事業者の損害賠償責任は〇〇円を限度とする。」という責任制限の契約条項を規定した場合、消費者契約法8条により条項全部が無効になる可能性があります。この点については、別の記事で紹介していますので、そちらをご覧ください。

このような、事業者の責任を一部免責する条項全部が無効になるのを避けるために規定されるサルベージ条項として以下のような記載例が紹介されています。

「免責条項が法令により無効となった場合に、当該条項は法律上最大限認められる限度で適用される」

日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編著『コンメンタール消費者契約法(第2版増補版)』147頁(商事法務、2015)、後藤巻矩ほか『条解消費者三法(第2版)』117頁

「法律上許される限り賠償限度額を〇万円」

消費者契約に関する検討会「報告書」19頁(令和3年9月)

なお、このようなサルベージ条項は、理論的には、損害賠償の一部を免除する場合に限定されないものと考えられます。

サルベージ条項の問題は理論的には事業者の損害賠償責任の一部免除に関わる場合に限定されないことには留意する必要があり、「法律上許される限り」という留保文言は契約内容の不透明さという点で非常に問題があり、法第3条第1項第1号との関係で問題があること等を逐条解説等で示すことも必要と考えられる。

消費者契約に関する検討会「報告書」19頁(令和3年9月)

サルベージ条項の問題点

では、このようなサルベージ条項の何が問題なのでしょうか。
この点については、消費者契約に関する検討会「報告書」では以下のような問題点が指摘されています。
① 契約条項のうち有効となる範囲が不明確なため、消費者の権利行使が抑制されるおそれがあること
② 契約条項のうち有効となる範囲が不明確であるにもかかわらず、一部が有効となる可能性があること

現在も、事業者の損害賠償責任を免除する契約条項に「法律上許される限り」等の留保文言が付される形式で、サルベージ条項が使用される例が見られる。
このような形式を有するサルベージ条項は、留保文言が付される結果、契約条項のうち有効とされる範囲が不明確となり、消費者が法律上請求可能な権利行使を抑制されてしまう、また、軽過失の場合に損害賠償の限度額を定めることとせずに「法律上許される限り賠償限度額を〇万円」とする契約条項を作成する場合は、留保文言がない場合には、本来全てが無効となる可能性があるところ、「法律上許される限り」等の留保文言によって、条項の文言からはその趣旨が読み取れないにもかかわらず軽過失の一部免除を意図するものとして有効になる可能性があるという不当性が見られる。

消費者契約に関する検討会「報告書」19頁(令和3年9月)

サルベージ条項の有効性について

以上のような問題のあるサルベージ条項ですが、このような条項は法律上有効性が認められるのでしょうか。
消費者契約に関する検討会「報告書」では、今後、このようなサルベージ条項による効果を認めない旨の規定を法律に設けることも考えられるとされていますが、現状ではサルベージ条項による効果を認めない旨の規定は見当たりません。

事業者の損害賠償責任の範囲を軽過失の場合に一部免除する旨の契約条項は、これを明示的に定めなければ効力を有さない(サルベージ条項によっては同様の効果を生じない)こととする規定を設けることが考えられる。

消費者契約に関する検討会「報告書」19頁(令和3年9月)

そこで、現状でサルベージ条項を規定した場合に、これを有効としてサルベージ条項による効果が認められるのかが問題となります。
この点について、日弁連消費者問題対策委員会編著のコンメンタールでは、無効と考えられるとの見解が示されています。なお、以下の見解中の条文は消費者契約法の条文です。

約款中に「免責条項が法令により無効となった場合に、当該条項は法律上最大限認めっれる限度で適用される」旨の特約条項(いわゆるサルベージ条項)をおいえている例もあるが、かかる特約条項は、8条等における当該条項の全部無効の効果を潜脱する趣旨のものであるから、消費者に一方的に不利益な条項として、10条により無効と解される。

日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編著『コンメンタール消費者契約法(第2版増補版)』147頁及び148頁(商事法務、2015)
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