破産手続・免責手続と強制執行の禁止等について

破産手続と強制執行の禁止等について

 破産手続き開始の申立てにともなう不随手続きとして強制執行の中止が行われたり(24条)、破産手続開始の決定の効果として強制執行等の禁止の効果が生じたり(42条1項、43条)、破産財団に属する財産に対してなされていた強制執行等は破産財団に対してその効力を失うなどの効果が生じたりします(42条2項) 

(他の手続の中止命令等)
第二十四条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続又は処分の中止を命ずることができる。ただし、第一号に掲げる手続又は第六号に掲げる処分についてはその手続の申立人である債権者又はその処分を行う者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限り、第五号に掲げる責任制限手続については責任制限手続開始の決定がされていない場合に限る。
 債務者の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法(明治三十二年法律第四十八号)又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この節において「強制執行等」という。)の手続で、債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権若しくは財団債権となるべきもの(以下この項及び次条第八項において「破産債権等」という。)に基づくもの又は破産債権等を被担保債権とするもの
 債務者の財産に対して既にされている企業担保権の実行手続で、破産債権等に基づくもの
 債務者の財産関係の訴訟手続
 債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
 債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)第三章又は船舶油濁等損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)第五章、同法第四十三条第五項において準用する同法第三十一条及び第三十二条並びに同法第四十三条第六項において準用する船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第三章(第九条、第十条、第十六条及び第五十四条を除く。)若しくは船舶油濁等損害賠償保障法第五十一条第五項において準用する同法第三十一条及び第三十二条並びに同法第五十一条第六項において準用する船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第三章(第九条、第十条、第十六条、第四節及び第五十四条を除く。)の規定による責任制限手続をいう。第二百六十三条及び第二百六十四条第一項において同じ。)
 債務者の財産に対して既にされている共助対象外国租税(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。第百三条第五項及び第二百五十三条第四項において「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税をいう。以下同じ。)の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分(以下「外国租税滞納処分」という。)で、破産債権等に基づくもの

(他の手続の失効等)
第四十二条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。

(国税滞納処分等の取扱い)
第四十三条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する国税滞納処分(外国租税滞納処分を除く。次項において同じ。)は、することができない。

 しかし、このような強制執行等の禁止効や中止効は破産手続について認められるものであって、破産手続が終わると認められなくなるのが原則です。

破産手続が終結すれば、それらの禁止効は解除され、また、中止されていた差押え等に係る財産がなお存在する時には、その差押え等の効力は復活するのが原則である。

伊藤眞ほか『条解破産法(第3版)』1690頁(弘文堂、2020)

免責手続と強制執行の禁止等について

 では、例えば、同時破産手続廃止決定により破産手続が終結した場合には強制執行が可能になるのでしょうか。破産手続は終結しても、通常、免責手続は続いています。
 この点、破産法249条1項は、免責許可の申立て(248条4項によるみなし申立を含む)があり、かつ、同時破産手続廃止決定(216条1項)等の決定があったときには、免責許可申立についての裁判確定までの間は破産債権に基づく強制執行等をすることはできず、また、既になされている強制執行等は中止されることとして、その間の破産債権による強制執行等をすることができないこととしています。

(強制執行の禁止等)
第二百四十九条 免責許可の申立てがあり、かつ、第二百十六条第一項の規定による破産手続廃止の決定、第二百十七条第一項の規定による破産手続廃止の決定の確定又は第二百二十条第一項の規定による破産手続終結の決定があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分若しくは外国租税滞納処分若しくは破産債権を被担保債権とする一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この条において「破産債権に基づく強制執行等」という。)、破産債権に基づく財産開示手続若しくは第三者からの情報取得手続の申立て又は破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分(外国租税滞納処分を除く。)はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの並びに破産者について既にされている破産債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続は中止する。

強制執行等の禁止等の効力が生じる期間

強制執行等の禁止等の効力が生じる期間は、
  同時破産手続廃止決定(216条1項)
  異時破産手続廃止決定(217条1項)の確定
  破産配当による破産手続終結の決定
から、免責許可申立てについての裁判が確定するまでの間です。
 免責許可決定が確定すれば、破産者は、破産手続きによる配当及び非免責債権を除き、責任を免れます(253条1項本文)。

強制執行等が禁止される債権

破産債権または外国租税滞納処分に係る外国租税の請求権です。
財団債権は249条による強制執行等の禁止の対象にはなりません(なお、破産手続中は、財団債権についても、強制執行等は禁止されます(42条1項)。

強制執行等の禁止の対象となる財産

「破産者の財産」です。
破産財団を構成していた財産、破産手続下の自由財産、破産手続開始決定後の新得財産も含まれます。


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