清算的財産分与の一般的な算定方法

 清算的財産分与の算定方法については、裁判官が執筆した「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)128頁及び129頁 にとても分かりやすく記載されているので、ご紹介したいと思います。

女性弁護士
女性弁護士

清算的財産分与の算定方法について、具体的な事例を挙げて説明してくれている文献ってありがたいですよね。

男性弁護士
男性弁護士

そうだね。裁判官が説明してくれているというところも嬉しいね。

基本的な算定方法

 まず、基本的な算定方法については、以下のように記載されています。

具体的な算定方法は,原告名義・被告名義の資産・負債を合計して2分の1し,その額と,原告又は被告名義の資産・負債の合計額との差額を分与すべき額とするのが基本となる。

蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)128頁

 その上で、具体的な事例を挙げて以下のように説明されています。

申立人の純資産がプラス1000万円、相手方の純資産が2000万円の場合

例えば,申立人の純資産がプラス1000万円,相手方の純資産がプラス2000万円の場合,合計額の2分の1である1500万円と現に保有する1000万円との差額500万円が相手方から申立人に対して分与すべき額となる。

蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)128頁
申立人¥10,000,000
相手方¥20,000,000
合計額¥30,000,000
その2分の1¥15,000,000
蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)128頁
女性弁護士
女性弁護士

夫婦が協力して形成した純資産が3000万円なら、財産分与によって双方が1500万円ずつ保有する状態にすればよいということですね。

男性弁護士
男性弁護士

そのために、2000万円を保有している相手方から申立人に対して、500万円を分与すべきということになるわけなんだ。

申立人の純資産がマイナス1000万円、相手方の純資産がプラス2000万円の場合

申立人の純資産がマイナス1000万円,相手方の純資産がプラス2000万円の場合,合計額の2分の1である500万円と現に保有するマイナス1000万円との差額1500万円が相手方から申立人に対して分与すべき額となる。

蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)128頁及び129頁
申立人¥-10,000,000
相手方¥20,000,000
合計額¥10,000,000
その2分の1¥5,000,000
申立人に支払われる額¥15,000,000
蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)129頁
女性弁護士
女性弁護士

夫婦が協力して形成した純資産が1000万円なら、財産分与によって双方が500万円ずつ保有する状態にすればよいということですね。

男性弁護士
男性弁護士

そのために、2000万円を保有している相手方から申立人に対して、1500万円を分与すべきということになるわけなんだ。

申立人の純資産がマイナス2000万円、相手方の純資産がプラス1000万円の場合

さらに,申立人の純資産がマイナス2000万円,相手方の純資産がプラス1000万円の場合,合計額の2分の1であるマイナス500万円との差額は1500万円となるが,双方がマイナス500万円となるようにするということは,相手方にマイナス500万円の債務を引き受けさせるに等しく,清算としての分与の範囲を超えているから,相手方の保有する1000万円の限度で相手方から申立人に対して分与させるべきこととなる。

蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)129頁
申立人¥-20,000,000
相手方¥10,000,000
合計額¥‐10,000,000
そのの半分¥‐5,000,000
申立人の支払われる額¥10,000,000
女性弁護士
女性弁護士

夫婦が協力して形成した純資産がマイナス1000万円なら、財産分与によって双方がマイナス500万円ずつ負担する状態にするということにならないのでしょうか?

男性弁護士
男性弁護士

それって、相手方にマイナス500万円の債務を引き受けさせるに等しいわけだけど、裁判実務は、債務の負担を命じる財産分与については概ね消極的な態度をとっているようだよ。

女性弁護士
女性弁護士

だから、相手方の保有する1000万円の限度で申立人に対して分与すべきということになるんですね。

男性弁護士
男性弁護士

そうなんだ。さらに、この事例については以下の記載のとおり、相手方からの分与額が1000万円よりも減額されることもあるみたいだよ。

もっとも,申立人と相手方の収入や年齢,未成年の子の有無,養育費の額などの一切の事情を考慮し,相手方にも一定の財産を保持させた方が当事者間の実質的な公平や福祉にかなう場合は,相手方からの分与額を1000万円よりも減額する場合もある。

蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)129頁

双方の純資産がマイナスの場合

双方がマイナスの場合には,婚姻同居期間中に財産を形成することができなかったということであり,分与は認められない。

蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)129頁
女性弁護士
女性弁護士

清算的財産分与の算定方法について、基本から応用まで、具体的な事例を挙げて説明してくれているので、とてもわかりやすいですね。

男性弁護士
男性弁護士

そうだね。裁判官がこんな風にわかりやすく具体的に説明してくれると実務家としてはとてもありがたいよね。

  • 蓮井俊治「財産分与に関する覚書」ケース研究329号(2017)128頁及び129頁
  • 秋武憲一・岡健太郎[編著]『離婚調停・離婚訴訟(三訂版)』(青林書院、2019)191頁及び192頁

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