養育費、婚姻費用の一般的な算定方法

 養育費、婚姻費用の算定方法については、平成15年に東京・大阪の裁判官等によって、標準算定方式・算定表が提案され、この提案による標準算定方式・算定表を用いた算定が定着していました。社会情勢の変化等を受けて、令和元年に司法研修所が編集した「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」が公表され、改定標準算定方式・算定表が提案されています。

平成15年に提案された標準算定方式・算定表

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 平成15年に提案された標準算定方式・算定表については、三代川俊一郎ほか「簡易迅速な養育費等の算定を目指してー「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」判タ1111号(2003)285頁以下に詳しく解説されています。

計算式

養育費の算定・子が1人の場合

① 基礎収入=総収入×0.34~0.42(給与所得者の場合)
       総収入×0.47~0.52(自営業者の場合)
       (いずれも高額所得者の方が割合が小さい。)

② 子の生活費=義務者の基礎収入×55 or 99【子の指数】/
         (100+55 or 90【義務者の指数+子の指数】)

③ 義務者の養育費分担額=子の生活費×義務者の基礎収入/
              (義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

司法研修所編著『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』14頁(法曹会, 2019)
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 ③の義務者の養育費分担額を計算の内容をみると、②の計算で算出された子の生活費の額を、義務者及び権利者の基礎収入の割合で按分した上で、義務者が支払うべき養育費の額を算定しているよね。これを、収入按分型と呼んでいます。

 なお、③で算出された義務者の養育費分担額は「年額」ですので、「月額」を算定するにはこれを12か月で割ることになります。

④ 義務者のひと月の養育費分担額 = 義務者の養育費分担額(③) / 12

養育費の算定・子が複数の場合

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 例えば、15歳未満の子が2人の場合は、上記の②が次のような計算式になります。

 ② 子の生活費=義務者の基礎収入×(55+55)/(100+55+55)

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 15歳以上の子が1人と15歳未満の子が2人の場合は、上記②が次ような計算式になります。

 ② 子の生活費=義務者の基礎収入×(90+55+55)/(100+90+55+55)

婚姻費用の算定・権利者が15歳未満の子2人と同居している場合

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 次に、婚姻費用分担金の算定です。

 具体例として、義務者・権利者が別居しており、権利者の方が15歳未満の子2人と同居し、義務者が単身で生活していて、義務者の基礎収入(X)の方が権利者の基礎収入(Y)よりも大きいという場合を想定して、以下のように計算しています。

① 権利者世帯に割り振られる婚姻費用(Z)
 =(X+Y)×(100+55+55)/(100+100+55+55)

② 義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額 =Z-Y

司法研修所編著『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』14頁(法曹会, 2019)

計算式で用いられている用語の説明

基礎収入

男性弁護士
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 養育費や婚姻費用の算定で用いられる「基礎収入」は総収入のことではありません。総収入から、一定の税金や経費等を控除したものが「基礎収入」となります。

 以下では、給与所得者と自営業者の「基礎収入」の算定方法をご説明します。

給与所得者の場合
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 基礎収入は、総収入から公租公課、職業費及び特別経費を控除した額になります。

 実際の計算方法としては、基礎収入割合(42%(低額所得者の場合)から34%(高額所得者の場合)を算出し、基礎収入割合を総収入に乗じて、基礎収入を認定しています。

総収入から、公租公課、職業費及び特別経費を控除し、基礎収入を認定する。

① 基礎収入=総収入×0.34~0.42(給与所得者の場合)
  (高額所得者の方が割合が小さい)

司法研修所編著『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』11頁、14頁(法曹会, 2019)
自営業者の場合
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 基礎収入は、総収入から所得税、住民税及び特別経費を控除した額になります。

 実際の計算方法としては、基礎収入割合(52%(低額所得者の場合)から47%(高額所得者の場合)を算出し、基礎収入割合を総収入に乗じて、基礎収入を認定しています。

自営業者の基礎収入は、総収入から所得税、住民税及び特別控除費を控除した金額とされている

① 基礎収入=総収入×0.47~0.52(自営業者の場合)
  (高額所得者の方が割合が小さい)

司法研修所編著『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』14頁、32頁及び33頁(法曹会, 2019)

子の指数

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 平成15年の提案では指数は子の生活費を計算するためのものであり、生活費及び教育費に関する統計から導きだされると説明されています。
 子の指数には、子の生活費のみならず、教育費も考慮されています。

当研究会では、生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される「標準的な生活費指数」によって子の生活費を計算することにした

三代川俊一郎ほか「簡易迅速な養育費等の算定を目指してー「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」判タ1111号(2003)290頁
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 その結果、子の指数は、親を「100」とした場合、年齢0歳から14歳までの子について「55」年齢15歳から19歳までの子について「90」とする提言がされています。

 子の指数には、教育費も考慮されていますが、その内容は公立中学や公立高校の学校教育費相当額です。

 年齢〇歳から十四歳までについては公立中学校の子がいる世帯の年間平均収入に対する公立中学校の学校教育費相当額を、十五歳から十九歳までについては公立高等学校の子がいる世帯の年間平均収入に対する公立高等学校の学校教育費相当額を考慮することにより、子に充てられるべき生活費の割合を求めることとした。
 その結果、子の標準的な生活費の指数は、親を「一〇〇」とした場合、年齢〇歳から一四歳までの子について「五五」、年齢一五歳から一九歳までの子について「九〇」とするのを相当と判断した。

三代川俊一郎ほか「簡易迅速な養育費等の算定を目指してー「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」判タ1111号(2003)290頁

令和元年に提案された改定標準算定方式・算定表

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 令和元年に司法研修所が編集した「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」が公表され、改定標準算定方式・算定表が提案されています。

 この提案では、基礎収入割合や子の指数の見直しなどが提言されています。

基礎収入割合の見直し

給与所得者

 給与所得者の基礎収入割合は54%から38%(高額所得者の方が割合が小さい。)

自営業者

 自営業者の基礎収入割合は61%から48%(高額所得者の方が割合が小さい。)

子の指数の見直し

 親を「100」とした場合、年齢0歳から14歳までの子について「62」、年齢15歳以上の子について「85」とする提言がされています。

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